他人の失敗を糧としよう。 インフォテリアUSA、LUNARR
景気後退の影響下、USに進出していた日本人ベンチャー企業家が相次いで事業を閉鎖しました。
LingrとRejawサービス終了のお知らせ (インフォテリアUSA)
今回は残念なお知らせがあります。5月末をもって、LingrとRejawの両サービスをシャットダウンすることになりました。いずれのサービスも、すでに新規サインアップは受付停止済み、5月15日までユーザデータのダウンロード依頼を受け付け、5月16日からは新規発言ができなくなり、5月末の完全停止までの間にデータをダウンロードしていただく段取りになります。
すでに米国のメディアでも (LUNARR)
弊社サービスだけでなく会社自体もディゾルブする事にした。とても残念だけど6月末で終わらせる。協力して頂いた方々、応援して頂いた方々、弊社サービスを使って頂いた方々に本当に心からお礼を申し上げたい。「本当にありがとうございました。」(_ _)
Failing to snag user Lunarr decides to shut down
前者ははインフォテリアから出資をうけた江島健太郎さんのインフォテリアUSA、後者はサイボウズ創業社長の高須賀 宣さんのLUNARRです。
失敗の原因分析や、サービスの内容は後で触れるとして、彼らのように世界に向けてソフトウェア・アプリケーション提供する企業を作ろうとしている方たちがギブアップする姿は悲しいものがあります。
しかし、同時に「失敗して嬉しい」気持ちがあるのも事実です。
なぜなら、世界中規模のサービスのラウンチが、挑戦さえすれば誰にでも得られるような容易い事ならば、それをしない自分が愚かでしかないからです。
僕自身もいつかは世界中に影響を与えるだけの企業を企業and/or経営したいという願望があり、そこから遥か遠いところにいる自分に焦りもあります。それ故に、彼らの失敗が、僕の判断の正しさをサポートするため嬉しいのです。(もちろん、彼らの挑戦の失敗という事実は予測していたが、残念です)
there are no failure until you quit! と言われた通り、僕は世界的規模のベンチャー、世界的規模のサービスへの道をあきらめない。
高須賀さんが言うとおり、諦めなければ失敗ではなく、成功までの回り道にすぎません。失敗なんて何度してもいいんです、死ななきゃなんとかなります。これは僕の座右の銘「死ななきゃOK」と同じです。是非一緒に仕事がしたいものです。
ただ、会社が継続しないのは「死亡」と同じなんですよね・・・。Lingr、RejawにしろThemes、Elementsにしろ事業売却ではなくクローズです。そして、会社も清算(破産・倒産にあらず)してしまうのですから。諦めないってのは会社を継続させるってことじゃないのでしょうか?
人生はQuitすると終わりですが、会社はQuitしてもRestartできるのが良い点です。江島氏も高須賀氏も、会社をQuitしても、新しい会社でRestartできるから安易にQuitしているようにも感じられます。事業性を信じて起業したわけですから、もっとギリギリまで粘ってもいいんじゃないでしょうか? それとも、事業性がないことに確信が得られたから辞めるわけでしょうかね。
ただお二人とも尊敬するのは、会社をたたむ決断ができる点です。
経営者ってのは、会社を潰すのは、会社を継続するのよりも遥かにストレスがかかるものです。特に「緩慢な死」にある企業では、3~5年くらい倒産を先延ばしするのは容易なことです。元気になる可能性がまったくみえなくても、プライド、取引先、社員へのエクスキューズなどを考えると、ついつい延命措置をとってしまいます。
江島氏は自身の失敗理由を分析していますが、私なりに二人の失敗を糧とするならば、「やりたいことをやったが故に失敗した」といったところでしょう。極端な表現をするならば「成功することを選択しなかった」とも言えます。
あたりまえじゃん!・・・と怒らないでください。
企業にとって成功とは、「収益をあげる」ことです。利益を上げていない企業が10年、20年と継続することはごく一部の例外を除いてありえません。ベンチャーですから、3-4年は営業利益がでなくてもOK・・・かもしれませんが、売上げが上がらないことはOKではありません。売上げが伸びていれば、赤字であっても出資者はついてきます。売上げがないと、たとえどれだけ社会に貢献できる事業であっても、出資する人はいません。それは寄付で運営されるボランティア事業とすべきでしょう。
高須賀氏の4/30の日記には「本物ベンチャーの初期にビジネス・モデルは不要だ。あれば将来価値を著しく小さくする」と述べられています。
ああ、確かに「本物」なら収益モデルなどたてていなくても成功するかもしれない。しかし、出資者は、どうやって「本物」を見分けるのだろうか? また、ベンチャー当事者たちは、現時点では「本物」でも未来に渡って自分たちのビジネスが「本物」でありつづけるか?
否!本物と偽者に区別はないのです。
であるならば、経営者の責任はただ一つ、収益化モデルを導入する時点まで資金調達をすること、逆も真であり、自身の資金調達の可能な範囲内で収益モデルを導入することです。
高須賀氏が求めているのはシュペンターのイノベーションであって、ベンチャー企業の成功より難度の高い目標に思えます。
さて、ここで気を取り直して、お二方の事業内容・サービスを見てみましょう。
Lingr is an open community of chatrooms. You can chat about anything you want, in public or private rooms. No account is required, and no special software. Just choose a room and start chatting!
(要は、チャットサーバ。実装がCometってのが面白い。)
microblog + chat = fun
(紹介記事中でも指摘されていますが、所詮Twitter。「まぁ、こうやって書くとTwitterにコメント欄がついたぐらいの印象でたいした違いを感じないかもしれませんが、面白いのはそのコメント欄の実装の仕方。」・・・)
・・・・どちらも 売上げだすの厳しいなあ・・・お疲れ様です。
確かにCometは面白いですよ。AjaxとFlashがなければCometは一世を風靡したかもしれません。しかし、技術的な常識から考えれば、同期性が極めて高いアプリか、ストリーミング配信が必要なアプリでもなければ、全てのクライアント-サーバ間でコネクションを維持するのは、サーバーコストが無駄です。チャットなんてほとんどデータが流れないアプリで、このような実装はナンセンスです。そしてなによりも、他の実装が多数ありLingrを選択する動機が利用者にありません。
Rejawに関しては何ゆえにTwitter+Lingrのマッシュアップにしなかったの? って疑問のほうが先にあります。すでにTwitterが大きな領土を持っている事業に展開するのですから、コバンザメ戦略をとるべきでした。おそらく、「Twitter程度のアプリなんてすぐ作れる」と技術者思考が、経営判断を鈍らせたのではないでしょうか。
「Twitter程度のユーザを確保する」のは作ることに比べて遥かに難しいのです。
さて、次は高須賀氏のサービスです。
メールはコミュニケーションの手段であって、コラボレーションの手段ではないということだ。1対Nの一方通行のやりとりならメールで十分。しかし、N対Nならすぐにパンクする。LUNARRは、「ドキュメントという1つのテーマでメールをまとめる」(同社 CEOの高須賀宣氏)ことでN対Nのやり取りの質を上げる。
Lunarrの仕組みはこうだ。共同作業を始めるにあたって、まずファイルをLunarrにアップロードするか、ファイルのURLを入力する(Google DocsやZohoのようにオンラインでホスティングされている文書の場合)。あるいはテンプレートを利用してLunarr上でゼロから文書を作ることもできる。それからユーザーが画面右上のタブをクリックすると、ページを「裏返す」ことができる。この「裏側」には、相手がLunarrのユーザーであってもなくても、メール・アドレスさえ知っていればメッセージを送れるツールが付属している。このメッセージは当該文書について話し合うのに使えるだけでなく、その文書への相手のアクセスも提供する。
(N:Nのコラボレーションか・・・社会需要がないなあ・・・)
「elements」はTumblrみたいに画像やテキストなどをスクラップして共有するサイトです。
基本的には、Tumblrとほぼ同様のサービスなんじゃないかなと思います。Elements, is kind of a visual Twitter, allowing users to share what they’re looking at with others.
(「○○と同じだと思います」と評される時点で高須賀氏的には負けですね)
江島氏と比較するのは意味ないですが、Lunarrの方がずっとビジネスとしての堅実性が高く、その代償として成長の可能性が限定的です。良く言えばサイボウズでの経験が生きています。悪く言ってしまうと、過去の成功が仇となって、自分自身に枠をつくっているようです。
「N:Nのコラボレーションによる創造」がなんでドキュメント管理システムなんですか?
当面儲からなくてもいいのであれば、もっと野心的なサービスだしてほしい。「N:Nで結婚できるサービス」ぐらい言わないと、彼の求めるイノベーションは達成できないと思います。
しかし、高須賀氏の資産なら資金調達しなくても11人程度の会社を維持することができたのではないかという気もします。共同経営者の浜口氏と経営上の不一致が発生したのでしょうか? はてなの近藤氏も一年で日本にもどってきたが、サイボウズの経営上の問題があったのだろうか?
そのうち高須賀氏自身の口から騙られるであろうが、僕は彼自身の目標とLunarrの方向性が一致しないのが原因なのではないかと創造します。
繰り返しになりますが、お二人とも失敗ではなく、目標に到達するまでの過程のひとつであると思います。僕自身が同じように回り道をしないですむようにしたいですが、今の低リスク路線を選択している自分はもっと酷い遠回りをしている、もしくは目的地に向かって歩いていないとも考えられます。
いつか、同じようにハイリスクを覚悟した際に、資金繰りだけは確実に担保して、収益点まで経営を続けられることを肝に銘じたいです。
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