テクノロジー: 2009年5月アーカイブ
GWは日々の雑事や開発から離れて、少し離れた視点から事業を見つめています。先日、LingrやLunarrの失敗を分析したのもその一環です。
1年前になるんですが、「総務省がベンチャー経営の手引き」を出しているので、良い機会なのでこれを読みながら考えてみたいともいます。
この資料は、ベンチャー企業に事業計画の立て方の講義をするための講師への教科書としての位置づけがあります。218ページもありますが、後半部分はマッキンゼーのロジカルシンキング本やSay it with chart本などの抜粋や、「○○に必要なn個の習慣」などの心得が多いので、実質的には事業計画としては、第2章と第3章があたります。
地方自治体などがベンチャー支援の一環として指導講座を開く際の講師選抜の心得までつくってありますが、こちらみるのも参考になります。
で、この手引きなんですけど・・・戦略コンサル臭がプンプンする。ロジカルだけど、判り難く、現実剥離がある・・・。どこのコンサル会社かと中を読む前に調べてしまうのが悪い癖なんですが、調べたらすぐわかりました。ブレークスルーパートナーズ様の著作です。(いくらで落札したんだろ・・・800~1500万円くらいかなあ。)
この資料は悪いものではないです。ただ、あたりまえでつまらんな・・・といった印象があります。なぜでしょう?
創業期から事業拡大期の
ICT ベンチャーの経営者にとって求められる事業計画作成能力の向上を、効果的に支援するための教育プログラム(報道資料)
・・・ああ、内容が情報技術にフォーカスされてなく、一般的な経営論に始終しているからです。特許ポートフォリオについて1ページ、エンジニアのスキルチェックが4ページ。
この資料には大切な対比がひとつ抜けています。一般的なベンチャーと技術ベンチャーの対比です。
技術ベンチャーの難しさのひとつは「先行投資が大きく、リターンまでの期間が長い」という点です。多くの場合、自己資金だけで賄えない場合は出資者・融資元を探さなくてはいけません。この出資者を説得する際に必要な点を記してあるのが、総務省の手びきです。
一般的なベンチャーは事業計画に基づいて必要な出資をしてもらえれば一段落です。(出資者が事業計画を精査するので、妥当性が十分) しかし!技術ベンチャーは出資を受けてからも難しい。
なぜなら、技術ベンチャーは資金投資先の選択が複雑なためです。
例をあげて比べてみましょう。
①「1000円、10分ヘアーカット事業」と、②「ノートPC用小型燃料電池開発事業」で考えてみます。集めた資金をどの部分に投資するか、経営判断です。
①ヘアーカットは、「新規出店」、「集客広告」、「本部組織」の3つ。
②燃料電池は、「研究開発」、「製造」、「営業」の3つ。
ヘアーカットの投資はどれも、売上げ(利益)に直結します。本部組織への投資は、店舗の効率化をはかりコストを削減できます。投資のレスポンスも短いスパンで判明します。集客広告であれば1週間で効果がでてきます。
一方、燃料電池では「営業」ですら売上げに貢献するかどうかわかりません。マーケットの需要がないかもしれないからです。一般に、技術ベンチャーの営業は投資対象ではありません。1ないし2人程度でエグゼクティブ営業で頑張るべきです。
となると、投資先は「研究開発」と「製造」になります。どちらも、収益につながるまで時間がかかります。投資が売上げにつながるまでに年単位かかることがあたりまえです。また、投資が適確であったか判明するまでにかかる時間も同様に長くかかります。(アーリーステージのベンチャーは、研究開発ベンチャーと製造ベンチャーで普通は分かれるので、両方が対象になることは上場したあとでしょうね)
「研究開発」にいたっては失敗の可能性すらあります。
つまり、技術ベンチャーに投資する場合はVCは、「経営者の営業力」、「研究開発投資力」の2点を重視して投資します。(しかしこれができてないVCが多いのも事実、なぜなら後者はフタをあけるまで判らないから)
自分自身のことを考えると、最近は技術ベンチャーはリスク過ぎてやりたくないって気持ちが強いです。参入障壁が低く競合がいようが、レガシービジネスの焼き直しだろうが、資金を営業に再投資することでビジネス規模が大きくなり、車輪を回す速度と精度にのみ気を使えばよいビジネスに投資したいという気持ちが強くなっています。
