ビジネス: 2006年5月アーカイブ

ユニクロのショッピングサイト 不正注文で在庫4000着 業務妨害、男を逮捕
カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングのオンラインショッピングサイトに大量に偽の注文をし、女性用タンクトップ四千着以上の在庫を発生させたとして、警視庁捜査一課は九日、電子計算機損壊等業務妨害容疑で、長崎市の無職、二口慎太郎容疑者(29)を逮捕した。
調べでは、二口容疑者は昨年七月一日から四十一日間、自宅のパソコンから同社のサイトに接続。商品のタンクトップを注文するように見せかける操作を繰り返すことで、同社に約四千着の在庫を発生させ、業務を妨害した疑い。
この結果、タンクトップの在庫が急増。定価千円のところ半値で売らざるをえなくなり、同社は約二百五十万円の損害を受けた。
この記事に着目する理由は逮捕容疑です。偽計業務妨害ではなく、電子計算機損壊等業務妨害容疑で逮捕されています。
刑法 第234条の2 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。情報セキュアド 用語事典
これは逮捕容疑が明らかに間違っています。
「購入の意思のない購入指示を送信した」という点では、虚偽の情報を与えたといえますが、「電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず」とはいえません。その理由を述べてみましょう。
小規模ネットショップなどでは、利用者が閲覧から購入決定までの流れが短時間で終了しますが、Amazonのようにショッピングカートを用意した場合、ショッピングカートに商品をいれて、また別の日に別の商品を追加して購入するっといった利用者行動を認めています。在庫数に限りのある商品では、売り切れ商品を注文されないように配慮するために、ショッピングカートにいれる段階と、注文確定する段階で在庫確認をおこないます。
ユニクロのシステムではショッピングカートに商品をいれた段階で在庫数を減少させるという処理をおこなっていたために、注文が確定しなくても管理者からみて在庫が減少しているように見えたと推測します。(カートの商品がキャンセルされれば在庫数は戻されるようにはなっていたでしょう)
通常は、在庫に対して「在庫予約」という項目を作り、「在庫数」-「在庫予約数」 > 0 ならばショッピングカートに商品をいれることができるようにし、在庫の管理者は在庫数と在庫予約数の遷移をみながら発注をおこなうべきでした。
より理想的には在庫予約の平均購入率を測定し、「在庫数」 - 「在庫数」 × 平均購入率 > 0 となるように判断すればよかったのかと思います。
上記の状況で電子計算機損壊等業務妨害が成立するでしょうか? システムの設計としてショッピングカートに商品が追加された段階で、在庫数が減るという仕様だったわけです。その在庫数をの減少をもって商品在庫の追加発注をおこなったとしても、それも正常の作業です。ユニクロのシステム不備をついたというと誤謬です。
これで逮捕状がでるのなであれば、「1億円のダイヤを販売するショッピングサイトをで、カートに商品がいれられたので別の商機を逃した、逮捕してください」っていえます。
しかし、警察が電子計算機損壊等業務妨害で逮捕状をとった理由が1点あります。それは、この容疑者が注文を繰り返すために、操作マクロないし、それに類するソフトを使っていた点です。そこに警察側の逮捕状請求に錯誤があったのか、もしくは逮捕状の請求をする際に裁判所が逮捕状を発行しやすいと踏んだのかいずれかでしょう。
前者にしろ後者にしろ、システムは仕様どおりの動作をしているわけです。立件する際にはぜひとも偽計業務妨害罪にしてください。
