ニュース記事: 2009年3月アーカイブ
不況の影響なのか、最近荒唐無稽な似非科学の発表を安易にメディアが取り上げる例が目に付きます。
2chでも有名になったが「ベルシオンパワー」で空をとぶ
視察に訪れた航空理論のある専門家は目の前で見ていながら信用せず「どういうトリックを使っているのか」と声を荒げた。
通常の航空理論は機体に備わった両翼の上下間で、機体が直進滑走する際に発生する気圧差により揚力を発生させ、空中へ舞い上がる方式であるからだ。直進速度が落ち揚力が減少すると失速して墜落する。だが眼前の機体は空中停止し、両翼がないのだ。
開発者の鈴木政彦会長は「空気をつかむ、という新しい考え方で飛んでいる。正統な航空理論を学んできた方は自己否定になるため信じないが」と笑う。
“空気をつかむ”とは、両サイドの胴体で空気を逃がさないように空気抵抗を作り“抵抗の反作用で浮く”ことだという。例えば、水泳は水をつかんで後方へ押しやる時の反作用で体を前へ進める。空気中も同じ。空中停止はさながら立ち泳ぎだ。
この会社、よくよく調べてみれば、毎日新聞社が紹介したソフォス研究所の永久機関詐欺と同じ関係者によるものらしいです。
メディアが報道したくなるエッセンスをちりばめてあるのがよくわかります。
- 科学的な説明がつかないが、それは現在の科学体系とは異なる理論があるため
- デモンストレーションで動作するものをみせる
- 特許出願中 (審査請求中ではない)
- 海外からも注目されている
- 専門家がコメントをする
新聞記者は科学の専門家ではないので、専門家の裏づけがあると安易に信じてしまう。彼らほど権威に弱い業種も少ない。
似非科学を発表するほうはなにも全ての記者をだます必要はない、たった一人、どこでもよいので記者をだまして大手メディアに取り上げてもらえればよい。メディアがだまされると、メディアを盲目的に信用している投資家を騙すための格好の武器になります。
新聞社などの大手メディアがこの種の報道をするのは、検証能力が欠けるためだけではない。多少怪しくても、エンターテインメントとして、読者が面白いとおもえる内容であれば報道したくなるためです。
エンターテインメントであれば似非であれ詐欺であれ、物事の実態を正しく伝えるのがマスメディアのジャーナリズムであるのだが、「視聴者・読者が興味を持つか」が優先され、物事の本質を見抜くことをおろそかにしているのでしょう。
先週の東洋経済で取り上げられていた音力発電が、NHK教育のサイエンスZEROで取り上げられていました。題材が「減らせ!エネルギーロス ~ 熱再利用技術~」というもので、前半はペルチェ素子で熱から発電する話でしたが、後半にいきなり音力発電が紹介されはじめました。
ペルチェ素子に対してピエゾ素子を紹介するのは科学的教導番組としてはセンスが良いです。しかし、エネルギーの再利用という観点からいうと音力発電を紹介するのは妥当ではありません。音力発電はピエゾ素子の材料研究をしている企業ではなく、おもちゃを作っているエンターテインメント企業です。このような会社に技術企業の幻影をみせてしまうのでナンセンスです。
ウォーターエネルギーシステムを発表していたジェネパックスも今はホームページを閉鎖していますしね・・・。
昨今多くの会社が倒産・民事再生しておりますが、本日「アーバンエステート」が民事再生法を申請しました。帝国データバンクの倒産情報によると・・・資金繰りが悪くなって倒産とのことです。
急速な営業拠点の開設と従業員の募集に加え、テレビを中心とした積極的な広告宣伝活動から資金繰りは従前から厳しく、支払い遅延が散発するなど取引先の間で警戒感が高まっていた。さらに、近時の金融危機、不動産市況の悪化も重なり販売も低調に推移。こうしたなか、3月末に向けた資金調達も限界に達し、自主再建を断念した。
ライバル企業よりも多く商品を売ろうとすれば広告に頼ることになります。特に不動産のように同じ人が2つも3つも買う事がない商品は、買おうとする人全てにリーチしたいと考えます。そのためには、テレビ、新聞、大衆雑誌などマスメディアを使って広告するのが最も容易な手段です。 しかし、容易な手段であっても、費用対効果の良い手段とはいえません。
広告しなかった場合の売上げ、粗利
10億円、1億円1億円広告した場合の売上げ、粗利
20億円、2億円
広告する場合、「商品粗利分の金額で2倍以上の売上げ増」を達成しなければ意味がありません。規模の経済が効く商品・サービスは必ずしもこの限りではありませんが、普通は売上げ増えれば販管費も増えるので、粗利分の広告費で売上げ2倍+販管費増加分を売り上げる必要があります。
広告しなかった場合の売上げ、粗利、営業利益
10億円、1億円、3000万円1億円広告した場合の売上げ、粗利、広告除く営業利益
30億円、3億円、9000万円 つまり 1000万円赤字
販管費が粗利の7割くらいかかるとすると、3倍売上げが増えても赤字です。
アーバンエステートは規模のみを追求し広告の費用対効果をないがしろにしたために潰れたのです。
なぜこのような自転車操業が成り立つのかというと、広告費の支払いを広告代理店や子会社を使って、決算期を跨いで翌期払いにすれば帳簿上は黒字決算を出すことができるからです。
上の図の例で、広告費1億円を隠してしまえば、営業利益は3倍増です。売上げと利益が増えれば銀行の貸し出し上限が増え、新たに借入が可能になります。借金したお金で繰り越していた広告費を支払い、さらにより多くの広告を出していくというモデルです。
もちろん、上記のような広告の出し方はプロモーション戦略としてはリスクは高いですが、成功すれば大きく成長できるのでしばしば実施されます。
しかし、アーバンエステートの場合、「2個も3個も買う商品ではない」ため、広告効果のストックが発生していません。たかだか1回顧客獲得のためにだけ莫大な広告費を費やしていたわけです。アーバンエステートとしてもこの点は苦しんでいたようで、「60年住宅」と謳い、アフターサポートの保守費用で継続的な収益を得ようとしていたようです。
ネットでは広告の費用対効果が激しく問われますが、逆にいうとアーバンエステートのように売上げだけを追求した広告費の無駄遣いによって自滅する企業が極めて少ないという特徴があるかと思います。
